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「ギルさん、重いです」
猫のように擦り寄ってきてどんどん覆いかぶさってくる。
いつの間にかギルの中にすっぽり包まれていた。
優しい銀色の髪が頬にかかる。彼は寂しがり屋なのだと、ひそかに思っている。
口にすると笑ってごまかしそうなので敢えて聞かないが。
「…き、く。こっち向け」
「う、…いやです//」
こんな状態で振り返ったら心臓が壊れてしまう。
「俺のこと嫌いになったのか?…ヴェストの方がいい、か…?」
思いもしない名前が出てきて菊は焦った。
「な、なんでそこでルートさんなんですかッ?」
勢いで振り向いてしまった。そのせいで菊の肩に頭を預けていたギルは顔をあげることになってしまい……
二人は至近距離で見つめ合った。
ギルは真っ赤になってもこっちを見つめていた菊を、目を見開いて見ていたが、ルートと話していた時の菊を思い出してまた悔しくなって、菊の視線から背けた。
菊はそんな彼の行動を不思議に思った。
こんなにあなただけ想っているのに、自信がないのだろうか、と。
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