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「アキラ、今……俺に対して酷いこと思ったでしょ。」
「うん。」
「……アキラ、酷い…。」
「波立、黙ってれば格好良いのにって思っただけだよ!」
「アキラ、それって…。」
俺の言葉に、ボッと赤くなって波立はすりすりと俺に擦り寄ってくる。
そして、ピトリと背中に背中をくっつけて、くすくすと笑った。
気持ち悪いな、こいつ…。
でも、背中に響く低い低音の声の振動が心地よかったのは、内緒だぞ。
そんな俺たちのことを微笑ましいって感じの笑顔で見つめて、母さんは俺の目の前に半分に切っただけの、でかいスイカを置いた。
「え…ちょっと、これ…さっきの波立の対して大分荒くないですか?」
「だって、切るの面倒になっちゃって。」
「息子差し置いて、他人の息子優先ですかぁああ!!」
「だから、言ったでしょう?」
「……は?」
「顔の順位が100位くらい違うのよ。」
「……はぁぁああ!?」
この…。
胸まで筋肉。でも心は乙女…。め…!!
そうは思うものの、ここで逆らったら明らかに締められるのは分かりきっているから…。
俺は敢えて口をつぐむ事にした。
「アキラ、荷物をまとめなさい。」
「……はい…。」
母さんの手に渡された大きなバックを受け取って、俺はうな垂れる。
なんだか、勘当された息子みたいだ。
「美紀さん、俺は?」
「路君は……そうね、行ってくれるなら荷物まとめてくれる?」
「分かった。」
そう優しく諭すようにいって、母さんは波立に、俺とお揃いのボストンバックを手渡した。
……そうだった。
言うのが忘れてたけど、波立は家になんて帰ってない。
むしろ、俺の家に完全に居候しています。
前々からそうだったから、そうは気にならないけど…。
「そういえば、アキラ。」
「ん?」
ボストンバックを持って、階段を上がっていると、波立が下から問いかけてきた。
階段で話しかけられるとちょっと困る。
顔見れないし、まして足元が不安定だからすごく不安になるし。
「……アキラ、我が友たちと連絡とっている?」
「ん?あー…雪とか千夏ちゃんなら、毎日メールしてるよ?」
「ふぅん。」
「あと、里伊田は毎日写真だけ送ってくる。」
「………。」
「真曲先輩は……長文メール打ってくるんだよ…2000文字くらいの。だから、返信に時間かかって、一日一通ずつくらいしかメールしてない。」
「………れだけが…」
「ん?……波立?」
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