夏の熱気

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「路君はここに座ってて。あ、あと…スイカ切ったから、まな板の上の適当に持ってきて食べてて良いわよ。」 「分かった、美紀さん。」 「………。」 路君に、美紀さん。 どうして母さんと波立がこんなに仲が良いのかはなぞだけれど…。 前に波立が言っていたように、母さんは波立の家庭教師的なこともしてたらしいしな。 もしかして、波立って俺の父親候補!?とか思わないでもない。 母さんに言われた通りに、波立はスイカを何個かお皿に盛って、俺と母さんの中心に敷いた座布団に座った。 「で?なに?」 「アキラ。……これは、どういう事?」 「……これって?」 シャリシャリと、波立がスイカを食べる音だけが響いている。 母さんは夜叉顔のまま、ちゃぶ台の上に置いてある紙を俺に向かって押し出してきた。 この紙がなんだ? 「……?」 「よく、見てみなさい。」 「はぁ?」 折りたたんだ紙だったから、俺はそれを指先でツンッと弾いて開く。 波立も、スイカを頬張りながら乗り出してくる。 そこには、こう書いてあった。 『アキラ…。確かに、確かに…学園で後継者を探せとは言ったが、成績は免除するとは言っていないぞ。全教科ゼロ点とは流石に私もカバーの仕様が無い。夏休み中、学園に来なさい。家に居るよりも、恐らく学園で勉強したほうが良いだろう。』 「……えっと…。」 「アキラ、俺はちゃんと点取った。」 「分かってる!!分かってるよ!!お前は頭良いもんな!!」 「アキラ…可愛い。でも、これは…カバー出来ない…。」 一個目のスイカを食べ終わった波立は、皮を皿に置いて、次のスイカに手を掛けた。 その波立を横目で見ながら、母さんは分厚い封筒を俺に差し出してきた。 「何これ?」 「良いから、受け取りなさい。」 「……はい。」 相変わらず夜叉顔のまま母さんが言って、俺はそれを仕方なく手に取った。 ズシリ、とした重さから…明らかにこれは本だということが流石の俺にも理解できた。 そして、そこにもまた手紙が添えられていて…。 俺は、それをパラリ、と開いた。 『この問題集が全て解き終わるまで、学園から出ることは許さない。美紀さん曰く、恐らく、波立君もお前についてくるだろうからという事だから安心してお前を学園に一人で送り出す事が出来る。良いか、絶対にこの問題集を解き終わるまで学園からはでてはならん。』 こう書かれていた。 ……無情すぎる…。
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