『Ⅰ部』 第1章~僕~

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しまいには生理的な涙が目に浮かんできた。 ようやくペシルがくすぐるのをやめてくれたので、起き上がった。 「何で笑ってたんだ?」 「いやいや。だってあの時のペシルったらさ、なんか子供っぽくて」 ペシルはのけ者にされるのが嫌らしくて、くすぐる構えをした。 「分かったよ。これ以上したら、腹筋が筋肉痛になっちゃうって!」 落ち着いたようにペシルが構えた手を下ろす。 「僕達がもうちょっと小さかった頃、よく二人で実験室に行ったの覚えてる?」 「ああ、もちろん」 僕はクスッと笑った。 「ある時、父さんと母さんがいるとは知らずに、真っ暗な中に懐中電灯だけ持って入っていたじゃん」 ペシルの顔が、ぎこちなく固まる。 「そしたら、いきなり電池が切れちゃって、ドアも急に閉まっちゃったんだよね?」 「そ……そうだな」
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