『Ⅰ部』 第1章~僕~

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「……ガタッ!!と、音がして、辺りを見回した。真っ暗だったから分からなかったんだよね。急にピカッと二つ光ったんだけど、その顔は父さんと母さんだったんだよ」 ペシルは顔を両手で隠している。 「なのに、ペシルったら叫び声をあげて気絶しちゃったんだよ。……覚えてるぅ~?」 ……何も言わないペシル。 かなり嫌いなんだ。ペシルは、お化けとか幽霊とか、心霊現象が。言うまでもなく、暗い所やお化け屋敷ですらも無理なんだ。 「その時のペシルを思い出しちゃってさ」 何となく。何となくだよ、ペシルの唇がすこーし紫っぽくなったような……。震えてはいる。 「じゃなくて、あの紅い試験管だよ!」 「試験管……」 「そうだよ! あの紅い試験管は満月になると、紅く輝きだす。父さんと母さんが死んだ日に残っていた紅い試験管!!」 そうなんだ。
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