『Ⅰ部』 第1章~僕~

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クリセフが息を呑んだ。 ……やっぱり、何か知っている。知っているんだな? あの紅い試験管について。 「俺達にだって、あの時の事を変だと思う」 「いつまでも秘密にしておいて、何か起きたら困るでしょ?」 知ったかぶりにしか過ぎない。多分、上手く今のうちに聞いた方がいい。再度のチャンスはない。 「もう少しで満月になる」 僕の言葉に応じたように、クリセフが窓の方を見る。太った月が覗いた。 「そこまで気付いたのか」 僕とペシルは顔を見合わせた。やった!と、いう意味で。 一方のクリセフは、目は焦点があっていなかった。どこかを、優しそうな哀しそうな眼差しで見ている。 「話してほしいのか?」 「うん!」 「早く話せよ」 僕もペシルもそろって、ためらいはない。求めていた答えだ。断る理由はない。
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