『Ⅰ部』 第1章~僕~

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「今日も、またゴミ捨て場をあさらないと」 一人で呆れるように呟いた。 僕はビルの間の細い路地の障害物を避けて通り、ゴミ捨て場へ向かった。 ゴミ捨て場へ行き、あさっていると壊れた時計を見つけた。 「これも直してみよ」 それから、手を付けてないパンを見つけた。 「ラッキー!今日はちょっとついてる」 これが僕のポリシー。毎日の生活で習慣なんだ。アイデンティティとまではいかないだろうけど。 だって、僕と違う理由であさっている人は、たくさんいるでしょ? どうして、こんな生活に変わったのか分からない。僕のせいでも、誰のせいでもない。でも、一つ困る事がある。 「君、ここで何してるんだい?」 ゴミの収集の人だ。 「あさってたんです」 「……ホームレスかい?」 いつもこれだ。――違いますよ、込み入った事情がありましてね――。
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