『Ⅰ部』 第1章~僕~

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ペシルのお母さんは、僕が実験に支障を与えたと思っている。 「そうだな、悪かったよ。休みになったら、ペシルも一緒に日帰りの旅行でも行こう」 「日帰りでどこに行くんだよ?」 ペシルが憎まれ口を叩く。しっぺ返しのつもりなんだろうな。帰って来なかった分、少しでも懲らしめたいって言うしっぺ返し。 「それはその時でいいだろ?」 しっぺ返しは決まらなかったようだった。ペシルは冷めた顔をし、クリセフは豪快に笑っていた。 「チェッ!」 「そう怒るなよ、ペシル。今日は泊まればいいじゃん。ね、クリセフ?」 「ああ」 ペシルは嬉しそうに携帯電話を取り出し、電話をかけた。 ――もしもし、今日はダントの所に泊まるから――。 かなり一方的な言い方ではあるが、こうでもしないと、ペシルのお母さんは了承しない。 そんな事をしてるうちに、日はどんどんと陰って行った。
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