0人が本棚に入れています
本棚に追加
カリカリ、カシャン。俺の部屋にいつもどおりのシャーペンの走る音が鳴り響く。
色とりどりの参考書が偉そうに胸を張って机を占領する。いついれたのか、ミルクが分離してしまったコーヒーが湯気もたてずに横で居座る。
そんな、笑えるほどに何等変わらぬ一日が、今日も俺の前を流れていた。
皆目検討のつかない単語の羅列の相手をし始めたのは、まだ太陽がのぼりきらぬ前。
もう、ゆうに半日は格闘しているのではないか、と思うと急に目の前が霞んできた。
思わず、ため息という名の禁じ手を発動しかけた俺の脳に、切なさを感じる心の臓は、とうにどうかしてあるのだろう。
壁に掛けてある無駄に洒落たデザインの時計に目を滑らせれば、もうとうに正午なんざ過ぎていることに気が付いた。
あぁ、やっぱり。
細い眉じりがくしゅんと下がっていく自分に、笑えた。
カチ、コチ、カチ、コチ。暖かみのない、無機質な音が嫌に耳につく。
冷たい音だと思った。
どうも俺の脳はヌクモリ、という奴を猛烈に欲しているらしい。
ふいに、俺の頬の上に、ある感覚がよみがえる。
数ヶ月前のあの、シルクのようなそれでいて弾力を持った、それ。
無意識にその行為を求めていた自分に改めてきづく。
最初のコメントを投稿しよう!