§厳かに、それは

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そんな自分に吐き気さえ覚えた。どこの昼ドラだよ、と自虐してみせもする。 しかし、ながらだ。 生活感0と言っても過言ではない部屋の片隅に存在する、桃色のシュシュ、蛍光灯の光を鈍く反射する白い携帯電話、ラインストーンのちりばめられた趣味の悪い(あくまで俺の主観である)香水。俺の趣味とは正反対ながらくたたち。 それを目に入れた刹那、色づいた過去が脳裏を一瞬にして覆い尽くした。あまりに甘くて暖かいそれが思考をじわじわと侵食していく。 止められない、と思った。 先程とは正反対の水が視界を悪くする。 俺には、それは――甘くて、哀しすぎる。いつも、いつも、いつも、いつも…… 想いだしてしまうきっかけなど、この部屋には無数にあるのだ。 まだ消えないあいつの匂いに、まだ、と未練がましく期待してしまう自分がいる。 あいつの痕跡を残しておけば、それを頼りに帰ってくるのでは、と淡い望みを抱いてしまう自分がいる。 あぁ、情けない。 俺はいつから昼ドラの主人公に抜擢されたんだ。 そんな思考を振り切りたくて、ぼろ布のカーテンを思い切り開く。 カーテンレールが弾けとんだような音が聞こえた気もしたが、それは気のせいだろう。 白い何かが窓に張り付いている。ぱっと見、鳥のそのようなあれではないようだ。 不透明なガラスを覆うそれに、思考が少しずつ移っていくことに安堵する。 全く、俺はどこまで女々しいのだろう。 とにかく他の作業に集中したかった。 その一心で曇ったガラスの鍵を急いで開ける。 ミシ、と嫌な音がしたような気もしたが、それもきっと気のせいだろう。 何より今は、その白の答えが知りたかった。
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