その夜

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   ガラガラガラ 俺はまた風呂場のドアを開けてしまった。 浴室からはシャワーの音が聞こえる。 俺はまた、浴室の曇りガラスにもたれかかった。 ん? 突然シャワーの音が止まった。  カツン カツン 後ろからガラスをつつく音が聞こえた。 「??」 不思議に思った俺は、ゆっくりと振り返った。 曇りガラスと向き合う。 肌色の手の平の形が曇りガラスに浮きでている。 俺は自分の手の平をその手形に合わせ、重ねた。 「お前、手ぇ小せーな。」 「うるさいなぁ…。」 「………。」 「………。」 夕妃の姿は見えない。 つか、見えちゃダメだよな(笑) ガラス越しに手の平の温かさを感じた。
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