20855人が本棚に入れています
本棚に追加
縮まることのなかった、長い長い俺らの距離。
それが今この瞬間、ガラス一枚分にまで縮まった。
もう、離れんな。
俺は溢れだしそうになる想いを、必死に飲み込んだ。
今は言えねぇ。
全部にキリつけて中途半端な俺から、真新しい俺に変わったときに、面と向かって言うんだ。
だから夕妃、それまで
“待ってて”
どうせ伝わらないテレパシーをおまじないがわりに送った。
「バーカ。」
「なんだし急にー。」
重ね合う右手の隣りに、文字が浮き上がった。
“あほ”
書き返してやろうと思ったけど、こっち側には湯気がないから書けなかった。
「開けるぞコラ。」
「変態!!」
「変態じゃねーし!!」
まじ時間止まってくれよ。
「俊介くん~?あれ、どこ~?」
風呂場のドアの向こう側から、朝妃ちゃんの声が聞こえた。
お互い慌てて手の平を離した。
最初のコメントを投稿しよう!