2人が本棚に入れています
本棚に追加
/19ページ
タバコの煙が薄く漂う部屋。
ノートの上をひたすらに走る鉛筆のこすれる音、紙の上を滑る筆の音。
墨独特のにおいが満ちる。
部屋には5歳くらいの子供から、
40歳を越えた女性までいる。
皆、正座をして真剣な表情で
それぞれ与えられた課題をこなしていく。
そんな中私は、事務机の横に立っていた。
机にむかい、くわえタバコをして
私が書いた字をじっくり見ている眼鏡をかけた男性。
私はただじっと
彼が話し出すのを待っていた。
「うん、かっちゃん今日は終わり。帰っていいよ」
ニッコリと笑う彼は、
私が通っている習字教室の井上先生。
一見、怖そうだが、
本当はおもしろくて誰にも優しい人。
「じゃあ片付けます」
私も笑顔でこたえる。
最初のコメントを投稿しよう!