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手を伸ばせば掴めそうな月。
誰かの手によって血で染められたような赤い月。
鮮血の月と呼ぶにふさわしい。
深夜、俺はその月下、息を切らし、肩で息をしながら走っていた。
どのくらい走っただろうか。
「大丈夫か?」
俺は息を整えながら聞いた。
「うん。ちょっとしんどいけど、まだ大丈夫」
彼女、月佐野世界(つきさのせかい)は無理に笑顔を作って言った。
わかっている。世界はもう限界だ。
俺と世界は今、薄暗い路地にいる。
できる限り、こういう暗い場所にはいたくない。
「もうちょっとだけ頑張ってくれよ」
俺は世界を励ます。
「……」
返事は無い。
俺は世界の手を引き、また走り出す。
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