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情けない父は情けないながらも優しいが、情けない。
仕事は出来ないし、家事も出来ないし、騙されやすいし。
しかし父が作るチャーハンだけは誰が作ったものより美味しくて、私の細かいところまで実はちゃんと見てくれて、北島三郎が上手だ。
ゴキブリで一々絶叫する父だが、なんだかんだ一々退治しに行くのは、やはり私は父が好きなんだろう。
「はいはーい…ゴキブリ退治しにき、た…よ……?」
ガラガラとフスマを勢いよく開けると、そこにいたのは叫び続ける父と…
『あぁぁぁぁあぁあぁぁぁあ…』
異常なぐらい、声を上げ続ける、女…
白のブラウスは所々が赤黒く染まり、からし色のタイトスカートから伸びる足は片方が変な方向にまがり、もう片方はえぐれたヒザから骨が見えていた。
血で汚れたきついパーマの茶髪が頭の半分を隠すが、割れた頭蓋骨から脳がボトボトと落ちてきそうだ。
長い前髪からチラチラと見え隠れする目はギラギラと光り、もはや人間ではない。
真っ赤な口から真っ赤な舌が伸びていた。
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