A Table for Two

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父は目の前の存在にすっかり魅惑され、頭の中で声が聞こえたたのだと今日でも断言する。「彼女は運命の人だ」と声は言った。そしてそのすぐ後に、彼はつま先から頭のてっぺんまで走るひりひりした感覚を感じた。両親がその夜に見たり聞いたり感じたものがどのようなものであったにしても、彼らは二人とも何か奇跡的なことが起こったのだと理解した。 長い不在の後でお互いに追いつこうとする旧友のように、彼らは何時間も話した。それから、夜が終わるとき、母は自分の携帯の番号を「大いなる遺産」の内表紙に書いて、その本を父に渡した。父は別れの挨拶をして、彼女の額にキスをした。そして彼らは夜の中を反対の方向へ歩いていった。
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