第1章

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   四月一日。  大講堂を出て、正門に向かって歩を進める。  今年は例年よりも若干気温が低かったせいなのか、桜はまだ六分から八分咲きといったところだ。  俺は長かった受験戦争を終え、三年間通った高校を卒業し、今日、大学の入学式を迎えた。 天気は快晴。 空も青く澄み、絶好の入学式日和だ。  一般の公立中学から県立の進学校に進学した俺は、そこそこの成績を維持しつつ、部活動にも精を出し、地方のそれなりの国公立大学への進学を勝ち取った。 今振り返ってみても、それなりに充実した高校生活だったと思う。 何人かの友人に言わせてみれば「女っ気が足りない」とのことであるが、それは俺が望んだことではない。 俺だって、女っ気があるんならあった方がよかったさ。 俺は十八歳にして人生の厳しさを一つ知ったわけだ。 すべてがうまくいくわけじゃない、この辺が俺には妥当なところだろうと思う。
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