序章

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『――必死で逃げてたからここがどのへんか分かんない!後ろが崖で塞がってる所で……あっ川がある―――き、来た!あいつらもう来たよぅっ』 無線ごしにもハーツウルフの唸り声がかすかに聞こえてきた。 「分かったから木の上にでも逃げろ!殺されるぞっ」『―わ、わかった!でもあいつら木ぐらいへし折りそうな気が…』 「へし折られたら他の木に飛び移れ。いいな!」 『―そんな無茶言わ―』 陽の抗議を最後まで聞かずに無線を切り、ウエストポーチから双眼鏡を取り出し辺りを見渡した。 「川、川さえ見つかれば直ぐにあいつの居場所が分かるはずだ…」 しかし下は一面木が生い茂っている。木々の間のほんの少しの隙間から川を見つけなければならない。 「川なんてないぞっ。反対側か!?」 後ろの足場ぎりぎりまで身を乗り出し探す。 「くそっ木が邪魔だ!」 青々とした緑が視界を覆う。 と、木々の間が一瞬キラッと光った。 「――!あった、川だっ」よく見ると、細い川がさらさらと流れている。 これをたどれば陽が見つかるだろう。 「早く助けに行かないと陽がケモノに喰われちまうっ!」
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