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すかさず無線機に手を伸ばす。
「おい、爽香っ聞こえるか!」
『―うん?どうしたの、なんか用?』
「どうした、じゃない!緊急事態だ!!今空き地か!?」事態を知らない爽香の暢気な返事に鷹見はキレた。
『―へ?緊急事態?なんかあったの?』
「質問に質問で答えるんじない!緊急事態つってんだろうがっ。いいから今どこだ!?」
コブシを強く握りしめて怒りを押さえ込もうとする。あまり効果は出ていないが。
『―そ、そんなに怒鳴らなくてもいいじゃないか…今もあの空き地にいるけど』爽香少々怯えながら答えた。しかしそんな事に構ってはいられない状況だ。
「いいか、よく聞け。そこから北に真っすぐ上って行くと右手に川が見えるはずだ。後はその川を遡って行け!そしたら陽がいる!」とりあえず要点だけを伝える。
『―分かったけど、陽に会えばいいの?』
「行けば分かる!オレもすぐ行くっ。お前は先に行け、急げよ!!」
『―りょーかい!』と言って無線が切れた。もう陽のもとに向かったようだ。
「オレも早く行かなきゃな」
と呟きながら屈み込み、両方の靴のスイッチを押す。キュィィィィンという音とともに靴底がひかる。
「――よし、行くか!」
そう言って鷹見は遥か下の地面へ向かって崖から飛び降りた。
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