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「…オジサン誰?」
怪訝そうな顔で問う夢美に、男は苦笑しながら「これは失礼」と会釈した。
風をひいた久遠へ山葡萄を持っていく途中だった夢美は、さっさと済まそうと「もういい?」と聞いた。
「いやいや、まだ待ってくれ。私の名前は彦座…。
夢を、叶える番人」
「夢をっ?」
その言葉に夢美は目を輝かせながら彦座を見る。
それに彦座はクッ、と口元を吊り上げると夢美に視線を合わせた。
「そうだよ」
「じゃあっあたしの夢も?」
「…君は…夢を叶えてあげる側になりたくないかい?」
「べつ…に……?」
彦座の目が細められた。その細められる瞳が、黒から緑に変色し、それを見た夢美の目が虚ろなモノへと変化していく。
「う…ん。かな、える。かなえ…たい」
彦座は顔を歪ませると、ある場所へと歩き始めた。
ふらつく足取りで、夢美がそれについてゆく。
地面に、潰れた山葡萄が無惨に落ちていた。
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