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もぞり、と布団の膨らみが動いた。
久遠はうっすらと目を開けるとおもむろに体を起こした。額に乗せていた布がべちゃりと落ち、久遠はぼーっと辺りを見回す。
眠りに就く前の記憶をゆっくりと思い起こすと、夢美が山葡萄を取ってくる、と言って出ていったことを思い出した。
立ち上がり外を見ればもう夕暮れ。
確か夢美が出ていったのは昼前だ。
「…遅すぎんだろ…」
久遠は少しだるい体を引き摺り、夢美が行ったであろう山の麓へと向かった。
そして、その道中で潰れた山葡萄を見つけた。
汁がまだ乾いていないところを見るとそれほど前ではないだろう。
山葡萄を踏んだと思われる足跡が五歩ほど続いている。
「…夢美?」
久遠は、少し眉を寄せて、足跡の向かった方角へ視線を向けた。
「確かこっちには…洞窟があった…よな?」
胸中を、嫌な予感が駆け巡る。久遠はそれを振り切るように走り出した。
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