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「夢美っ!」
久遠が彦座達の元へ躍り出るのと、ドチャッとずぶ濡れの夢美が倒れるのは同時だった。
異様な空気に包まれた空間で暫く呆気に取られていた久遠は、ハッと我に返り、夢美へと駆け寄った。
「夢美、夢美っ!オッサン何したんだよ!」
夢美を抱き起こし、久遠はギッと思い切り彦座を睨み付けた。
怪しく歪んだ笑みを浮かべる彦座はくるくると指を遊ばせながら久遠を見下ろす。
辺りの水溜まりが彦座の指に合わせパシャパシャと音を立てていた。
「何か言えよ!夢美はどうしたんだよ!何かあったらタダじゃおか…ね…?
…夢美…?」
段々と小さくなっていく久遠の言葉に、彦座はまた笑みを深くした。
久遠の腕に抱かれる夢美が、徐々に透けていき、久遠はただ目を丸くした。
「夢美っ!しっかりしろ!夢美!」
「心配はいらない」
半ばパニックで夢美を呼び続ける久遠とは対照的に、彦座は落ち着いた声で言葉を放つ。
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