338人が本棚に入れています
本棚に追加
「その子は真珠になるのだよ。ただの真珠じゃあない。願いを叶える未知の真珠さ。
人間も、妖怪も、全ての生ある者達の希望…。
“夢真珠”へと、な」
「夢…真珠…?」
彦座の言葉をおうむ返しして、久遠はただ茫然としたままだった。
聞き慣れない言葉を理解しようとするも、夢美はそれを阻むようにその体を青白く透けていく。
あまりにも信じられない光景に、久遠は頭が回らずただただ腕に力を込めた。
「少女の夢を媒体に、少女は1つの真珠となる。
永い時を、少女は夢真珠として時の流れに乗る。
それは、夢真珠が夢を叶えるまで永久に続く…」
「意味わかんねぇ、んだよっ!!」
『早く大人になりたいな』
その夢は叶わない。
何故ならその夢は叶うことなく夢真珠へとなったから。
その夢は、他者の夢を叶える“夢真珠”へと、変化してしまったから。
少女の夢そのものが夢真珠で、少女そのものが夢真珠。
「――っ!」
「ほら…出来た」
夢美の体が溶けるように消え、空をかく久遠の手。
コロン、と小さな何かが落ちた。
それは、真珠。
色々な色の、真珠。
どこか哀しげな光を放つ、
“夢真珠”。
最初のコメントを投稿しよう!