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訳も分からず叫び続けて。
訳も分からずただ少女の名を呼んで。
ただひたすらに、小さな真珠を握り締めて涙を流した。
響く、響く。
少年の悲しみにくれる叫びと嗚咽、そして高らかな男の声。
知らぬ内に取り出した、短刀が。うねうねと、意思を持っているかのように蠢いて。
しゃくりあげる声が、無意識に大きく響き渡った。
「木火土金水、金!」
それに驚いたのは今まで笑っていた彦座だった。
「自然五行…だと!?くそっ!」
夢美の儀式によって疲弊した体は言うことを聞かない。ふらつくその体を、少年は一閃、赤く染め洞窟を飛び出した。
握り締めた夢真珠に、ぼたぼたと涙を流しながら少年はただ走り続けた。
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