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雛。
俺は、お前を護れたことがあっただろうか…。
動けない四肢を、燦の操る木に絡め持ち上げて移動する壮大は、情けなさに項垂れながら思った。
心配させてばかりで、兄貴の時なんか雛がぼろぼろになりながら兄貴を救った。そして今。俺はお前の側にいない。お前は俺を護る為にアイツの元へ行った。
何で、俺は護れない?
力が欲しい。護れる力が欲しい。雛が泣かない力。雛をずっと笑顔にできる力。
守護だからだとか、そんなことは言わない。
ただ、雛を……。
「……木火土金水……火」
知らぬうちに溢れた言の葉。
始めに驚いたのは燦だった。ぐるっと振り向くと、俯いた壮大がいた。
気のせいかと思い、再度前を向いたが、ゴウッと背を熱風が叩き付けた。
慌てて距離を取って壮大を見ると、高い火柱があった。
チリチリと墨になった自身の能力に驚愕していると、火柱の中からガキンッという音が聞こえた。
「……取れた」
段々と小さくなる火柱から、金の能力が地面に転がって、壮大が佇んでいた。
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