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「壮大君。早速で悪いが、雛を連れて、ここを出てくれないか?」
「……はぁ?」
あからさまに不満を丸出しにしている壮大に、雛の父親は苦笑いをし、説明を始める。
「夢真珠を狙う者は後を絶たない。妖怪でさえも狙っている代物だ。ここに雛がいると、雛を、夢真珠を求めた輩が集まり被害が広がってしまう。だから、雛にはここを離れてもらうんだ。そして、壮大君、君も共に行き、夢真珠を護ってほしい」
その言葉に、壮大は明らかに何か言いたげだった。
しかし、反論しようとしたところ、雛に袖を引っ張られる。
振り向けば、無表情で、首を振る雛。
逆らうな、ということらしい。
「……わかりました。行きましょう雛姫」
ふてくされたように雛の手を取り、にやりと笑って言った。
いきなり敬語、そして姫と呼ばれ、無表情を徹していた雛はしばらくポカンと壮大を見つめたあと、小さくクスリと笑った。
それに壮大も笑みを返すと、握る手に力を込める。
「ではお父様、失礼します」
ペコリと一礼し、退室しようと踏み出す。
その時だった。
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