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「……な、今のは……火の力……!?」
驚愕に目を見開き燦が呟く。
壮大は暫く手のひらを見詰め、ぐっと握った。
「これが俺の、新しい力」
護るための力。
「……行こう、燦。雛を、助けに」
その瞳には強い意思。
燦は当たり前だ、と壮大を小突き二人は雛の元へと走り出す。
いつも情けなかった。
護ると言っておきながら傷付けて泣かせた。力が備わっても、結局は苦しんでいたのは雛。
もう、泣かせない、傷付けない。
たとえ死んだって。
それでお前が助かるのなら、生きるのなら。
俺は死のう。
俺はお前の守護なんだ。
「雛、待ってろ」
「彦座……。アンタは何がしたいんだ」
問う夢美に、彦座はクッと口角を上げた。
決まっているだろう、と指を空で泳がせる。離れた場所で流れる川が、それまで一定だった流れを歪ませ、意思を持っているかのように彦座の元へと集まる。
「夢真珠を、磨くんだ」
無垢な少女の命と夢から出来た夢真珠。
悲しみと憎しみに浸けて、もっともっと、染まり輝いて。
それは、歪んだ光を放つ……。
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