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「タチキル?よくそんな大口が叩けるな。甘々な雛ちゃんが?」
「確かに、私は甘いです。戦いなんてしたくないし、守護の壮大にだって私は戦ってほしくなかった」
願わくは、皆が笑って。
幸せに、顔を綻ばせて。
争いのない、温かな世界を。
ぎゅう、と血の止まらない腕を押さえつけ、雛は叫ぶ。
「夢美!聞こえている!?私は!貴女を解放したい!」
貴女は決して、こんな運命を望んだわけじゃない。
全てはこの、彦座が。
一人の少女の夢を、弄んだのが、始まりだった。
「夢美!今、助けるから!」
再度雛は、兵馬に手を伸ばす。
呆気なく振り払われ地に伏せる雛を、兵馬は歪んだ笑みで見下ろし、雛を踏みつけた。
「……鬱陶しいな。もう、死のうか?木火土金水、金」
シャキ、と刃を光らせたナイフが兵馬の手に収まる。
切っ先は真っ直ぐに雛へと向いて、微動だにしない。
「サヨウナラ、夢見雛。良い夢を」
凶刃が、雛へと、迫る――。
その、刹那。
「雛!」
ふと、自身を踏みつけていた存在が消える。
何事か考える前に、吹っ飛ばされ地に倒れる兵馬が目に入った。
「あ、れ……」
「雛!」
ぐい、と体を抱き締めるように抱き起こされた。
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