新たな力

6/20
前へ
/157ページ
次へ
「タチキル?よくそんな大口が叩けるな。甘々な雛ちゃんが?」 「確かに、私は甘いです。戦いなんてしたくないし、守護の壮大にだって私は戦ってほしくなかった」 願わくは、皆が笑って。 幸せに、顔を綻ばせて。 争いのない、温かな世界を。 ぎゅう、と血の止まらない腕を押さえつけ、雛は叫ぶ。 「夢美!聞こえている!?私は!貴女を解放したい!」 貴女は決して、こんな運命を望んだわけじゃない。 全てはこの、彦座が。 一人の少女の夢を、弄んだのが、始まりだった。 「夢美!今、助けるから!」 再度雛は、兵馬に手を伸ばす。 呆気なく振り払われ地に伏せる雛を、兵馬は歪んだ笑みで見下ろし、雛を踏みつけた。 「……鬱陶しいな。もう、死のうか?木火土金水、金」 シャキ、と刃を光らせたナイフが兵馬の手に収まる。 切っ先は真っ直ぐに雛へと向いて、微動だにしない。 「サヨウナラ、夢見雛。良い夢を」 凶刃が、雛へと、迫る――。 その、刹那。 「雛!」 ふと、自身を踏みつけていた存在が消える。 何事か考える前に、吹っ飛ばされ地に倒れる兵馬が目に入った。 「あ、れ……」 「雛!」 ぐい、と体を抱き締めるように抱き起こされた。
/157ページ

最初のコメントを投稿しよう!

338人が本棚に入れています
本棚に追加