338人が本棚に入れています
本棚に追加
「遅くなってごめん、雛」
「そう、だい」
思わず目から涙が溢れた。壮大は苦笑して雛を木に寄りかからせると、ギッと兵馬を睨み付ける。
「壮大、夢真珠が、」
「何?」
「そうだよ守護。夢真珠はココだ」
ぽん、と軽く投げニヤリと笑う兵馬に、雛は顔を歪めた。
「やめて!」
「さぁどうしようか守護?」
その言葉よりも速く、壮大は駆け出した。兵馬はふんと鼻を鳴らして嘲笑を浮かべる。
「馬鹿め。土の能力で俺に勝てるとでも、」
「木火土金水……火!」
瞬間、兵馬が目を見開き顔に驚きの色が浮かんだ。
「な、に!?」
ゴォ、と壮大の体から炎が噴き出した。そのまま兵馬に突っ込んで、拳を叩き込む。それを刀の腹で受け止めた。ギィン、と鈍い音が響き、すぐにぐにゃりと刀が曲がってしまう。
「ちく、しょう」
兵馬が顔を歪める。
炎の熱で曲がってしまうと能力が効かない。ぱっと距離を取ると直ぐにその刀を捨てた。
「貴様……2つの自然五行を……」
苦々しく呟きながら睨めば、壮大はニヤリと笑みを浮かべて兵馬を指差す。
「この力は、護るための力だ。夢見雛だけを、俺が護り抜くための力」
兵馬はチッ、と舌打ちして夢真珠へと視線を移す。
最初のコメントを投稿しよう!