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「う、くっ」
雛は血の止まらない腕を止血しようと着ている着物を引っ張るがどうしても切れない。元々力が弱い上、力が入らない。
どうしよう、私は助けたいのに。私はここで全てを救いたいのに。
「あ、ぐぅ」
「雛!大丈夫か!?」
「お兄ちゃ……」
「怪我してるじゃないか!待ってろ!」
ビッ、と着ていた着物を裂いて雛の腕にきつく結ぶ。雛は顔を歪めたが、「ありがとう」と言ってゆっくりと立ち上がり兵馬と壮大を見た。
激しい戦いが繰り広げられているそれは、見るからに壮大が有利ではある。
だが不安は拭い去れない。夢真珠は、未だ兵馬の手の中にあるのだ。
「いかな、きゃ」
「あんまり動くな、雛!」
「私が、いかなきゃいけないの。私は夢真珠、保持者だから」
その瞳には、強い意志が宿っていた。そんな雛に、燦は苦い顔をしてすぐに何か決心したような顔になる。例え、傷付けることになろうとも、これ以上無理をさせたくなかった。
「すう。お前は夢見じゃないんだ」
「……」
「本来は、関係ないだろう。壮大は守護として夢真珠を護る。だが、お前を護るわけじゃない」
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