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知っている。壮大が雛を大切に想っていることくらい。
知っているけれど、これ以上傷付いて欲しくなくて、非情な嘘を、ついた。
「雛。お前が頑張る理由なんて、ないんだ」
だからもう、無理はしないで。
「初めて会った時、壮大は言ってくれた。護るのはお前自身だと。それからずっと、壮大は私を護ってくれた。そばに、いてくれた」
何度も何度も。沢山の無茶をしながら。壮大は護ってくれた。
「雛、」
「私に出来ることなら、何でもしたい。皆を救えるならどんなことだってする。私は決めたの。夢真珠の因果を断ち切るって」
夢真珠を、夢美を。救いたい。
そんな雛に、燦は諦めたように息をついた。
会わない間、成長したのは容姿だけではなかったのだ。この弱くて強い少女の兄であることを誇りに思い、今自分がすべきこと。
「……わかった。雛、なら俺は護ろう。大切な妹を、槍が降ろうと刃が迫ろうと、全てからお前を護ろう」
「……ありがとう、お兄ちゃん」
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