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(夢美っ……)
夢真珠を奪われた今、貴女を感じることはできないけれど。
兵馬と戦っている時、確かに感じた。流れてきたのは夢美の想い、過去のセピア色の記憶。意図して夢美が雛に伝えたのか、それはわからない。
それでも雛は、感じた。
(久遠さんの生まれ変わりである兵馬さんと、戦いたくないって)
(対峙したくないって)
(刃を向けて欲しくないって)
(抱き締めて、欲しいって)
哀しくて痛い想い。
それを確かに、感じたから。
「兵馬さん!」
だから、だから。この戦いを止めなくちゃいけない。
夢美の、大切な人。雛の、大切な人。
戦って欲しくなんか、ない。死んでほしくない。
「ばか!雛、来るな!」
「貴方は、何で!」
ごう、と赤い炎をほとばしらせて、壮大がこちらを向く。瞬間その隙をついて兵馬がふりかぶった。
「ちっ!」
壮大は舌打ちをすると、右足を地面にだん、と踏みつけた。すると地面から土が壮大を守るように壁を作る。
「雛!あぶねぇから、燦のとこに……」
「何で、夢美を狙うの!?」
そう、叫んだ。
兵馬は何を今更、と呟く。
「彦座様の命令とあらば」
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