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その言葉に、プツン、と雛の中で何かが切れた。
「何で!?貴方は夢美を守ってくれたでしょ!?何で今、夢美を悲しませるの!?」
「何を……言って、」
言っている意味がわからない兵馬が目を見開き驚愕を隠せずに呟く。
壮大も、燦も、雛の見たことのない激昂に唖然としていた。
「彦座は、夢美から全てを奪った!永い永い時を、利用され続けながら孤独にさせた!貴方は、夢美にとってかけがえのない人の生まれ変わりなんだよ……?」
ぺたん、と座り込む。壮大がそっと寄り添って体を支えてくれる。
「なのになんで、」
どきりとした。兵馬は眼前の雛の涙から、目を逸らせなかった。どくん、と何か脈打つのを感じ、無意識に胸元を握る。
「なんで、かなしませるの」
「雛っ……!」
守護の驚きに彩られた声が聞こえる。それはそうだろう、兵馬は僅かな微笑を漏らしながら腕の中にいる少女を一層強く抱く。
「この、放せ!」
守護の、焦る声。そして燦の。
「壮大、大丈夫」
「あ?」
「大丈夫だから」
腕の中の少女が幼子をあやすように言う。兵馬はずくずくと疼く胸中のわだかまりに耐えながら、雛の耳元で囁く。
「すま、ない。夢見雛。操魔、がいるんだ」
そうして握らされたのは、夢真珠。
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