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「すま、ない」
再度謝る彼に、背を撫でることで応える。こっそりと渡させた夢真珠を握り願う。
「この人を救う悪魔を、どうか払って」
体外で夢真珠を使うのは初めてだったが、夢美がしてくれたのかすぐに夢真珠は反応を示した。
「あ、がっ!」
兵馬の苦し気な声。内にある操魔が尚留まろうとしているのだ。
「ぐああ!」
「っ!出ていって!この人から、出ていって!」
ぎゅっときつく抱き締める。すると兵馬は大きな声を上げてかくんと力を失う。瞬間体からぶわっと彼を蝕んできた闇が飛び出した。
燦はすぐに木の根を操って操魔を貫く。ぱん、と破裂したかと思うとそこにはもう何もなかった。
「あっ!」
だらんと脱力した兵馬を支えきれない。
倒れそうになった雛を支えたのは壮大だった。
「あ、そうだい……」
「無茶ばっかすんじゃねえよ」
兵馬を寝かせ、雛は小さく笑う。
「壮大には、言われたくないよ」
「口答えすんじゃねえ」
ぎゅ、と抱き締められる。雛が素直にごめんなさいと謝ると壮大は雛を離してぽんと頭を叩く。
「……さて。残る問題は一つだな」
視線は、薄ら笑いを浮かべる彦座へと向いている。
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