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「父上ぇえっ!!」
突如小さな女の子が部屋へと入ってきて、雛の父親に勢いよく抱きついた。
「おお、狩菜!」
雛の父親はさっきまでとは比べものにならないくらいの笑顔でその少女を抱き止めると、優しく頭を撫でる。
「んだあのガキ?」
どうやら壮大は少女が気に入らないらしい。
壮大は雛にしか聞こえないくらい小さな声で呟くと、鬱陶しい、といった視線を投げ掛ける。
そんな壮大に苦笑を浮かべながら、雛は、
「義妹」
と言い、目の前の幸せそうな父と娘を、羨望の瞳で眺める。
どこか寂しげに眺めるその瞳が揺れているように壮大には見えた。
自分には望めない、親子の絆。
願っても願っても、自分には絶対にやってこない。
雛は視線を落とした。
「ねぇねぇ父上?お姉様はもう行っちゃうの?」
「ああ、今行くところだよ」
雛は無意識のうちに、壮大の服の裾を掴んでいた。
「…?」
そんな雛の様子を、不思議に思いながらも壮大は雛の父親を見る。
「あのね父上。狩菜ね。お姉様に今日習った技受けてもらいたいの!」
「ほう?」
「っ!?」
雛の目が見開く。
服を掴む手にも、力がこもるのがわかった。
「狩菜最後にお姉様と戦いたいっ!」
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