新たな力

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護らなければと、思っていた。ずっと共にあると信じていた。 好きだった。 想いを告げることもなく、少女は小さな真珠になってしまって。どうにか護れないかと、死の間際、そこにいた女に、託した。 「……俺は、いや……久遠は。夢美が好きだった! 一緒にいたかった、一緒に生きたかった!」 ギリッ、と奥歯を噛み締め彦座を睨む。護らなければと思っていたのに。自分の無力さを嘆いて、死んでいったのに。兵馬として生まれ変わった自分は、仇である彦座に付き従って酷いことをした。兵馬が好きになった少女を傷付け、久遠の好きな少女をも傷付けた。 「俺が、兵馬が好きな夢見雛すら、刃を向けて傷付けた」 そんな自分が、憎くて許せない。 だけど。 「俺は! お前を殺して全てを終わらせる!」 短刀を引いて僅かな距離を起き、また彦座に切りかかる。 「木火土金水……水」 くるり、と彦座が指を回すと後ろで穏やかに流れていた川からヒュンと素早く兵馬向かって水が飛んできた。 それはピッ、と兵馬の頬をかする。ツッと血が一筋流れた。 「水は凶器だよ」 楽しそうに、彦座は笑った。
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