338人が本棚に入れています
本棚に追加
間一髪で避けるも、彦座に近づけない。壮大は雛に攻撃がいかないよう水を蒸発させるのが精一杯で、しかも疲労困憊とも言える苦しそうな顔をしている。
彦座は、笑みを浮かべていた。
(……このままじゃ、いけない)
雛は夢真珠を握り締める。兵馬と燦も何とか避けてはいるが疲れてきたのか攻撃がかすり始めている。
壮大は火の能力が予想以上に消耗が激しいらしく、背を見ただけで辛いことがわかった。
(どうしよう、私には何も……)
出来ない、そう思った瞬間目に涙が溜まる。ぼやけた視界に雛はきり、と唇を噛んだ。
何で自分は何もできないのだろう。何でいつも護られているばかりで、護ってくれる人が傷ついていくの。
嫌、嫌、嫌、嫌、嫌!!
皆を護りたい。皆を助けたい。
(……)
手のひらを開いて、夢真珠を見詰めた。不思議な光がどこか心配そうな夢美に見えた。夢を奪われた少女。幸せになるはずだった少女。奪われた少女。
救いたい、皆を救って、彦座を倒して、夢真珠の因果を断ち切って。
夢真珠の因果を断ち切る。それはどうすればいいのだろうか。夢真珠を壊す?けれどそうしたら夢美は?
(……あ)
最初のコメントを投稿しよう!