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ふとある考えが浮かんだ。ぎゅ、と胸辺りを掴んで目を閉じる。
夢真珠保持者になったあの日。
初めて壮大と会った。私の為に怒ってくれた。壮大、お父さんに殴られちゃったけど。
優しい瞳が、すごく嬉しくて。
雛姫、なんていうから酷く可笑しくて。
それからずっと、私を心配して、そばにいて、護ってくれて。
(……壮大)
ありがとう。私の為に戦ってくれて。強くなってくれて。
ありがとうの五文字だけじゃ、気持ちを伝え、きれないよ。
すぅっ、と頬を涙が伝う。雛はそれを拭うことはせず、決意を秘めた顔で真っ直ぐに前を見た。
彦座の、攻撃が止んでいた。が、壮大は肩を上下させながら、倒れ込んでいて。兵馬と燦は、傷だらけだった。
「壮大!!」
雛は、大きく壮大の名を叫ぶ。
「お兄ちゃん!兵馬さん!」
二人の名を、叫ぶ。
兵馬と燦が、ゆるりと雛を見る。泣きながら微笑む雛に、酷く驚いた顔をした。
壮大は、うつ伏せに倒れた状態からゆっくり上半身を起こすが、雛を見ずに「大丈夫だ、大丈夫だから待ってろ」と。それだけを言った。
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