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「夢真珠――いや、夢真珠の化身・夢美をこの世に蘇らせること」
その言葉に、彦座が目を向く。
三人も驚きを隠せず唖然とするばかりだった。
「夢見雛の体を……夢真珠、もとい夢美に譲る。変わりに夢美を、蘇らせて欲しい、これが雛の二つ目の願い」
泣きそうな声で、夢美が言った。
「ば、ばかな!」
彦座が信じられないといった顔で叫んだ。
「夢真珠は完全に体に溶けて無くなった。そして雛の体は夢美の体に、変わったんだ」
ぼろっ、と大粒の涙が夢美の頬を伝う。
壮大、燦、兵馬の三人は、出す言葉も見付からずただ押し黙る。雛は、もう、いない。
「……雛は、もういないのか」
壮大の溢した呟きに、夢美はゆっくりと頷いた。それは壮大の心を抉るくらいに残酷な真実で。
「もう夢見雛は、存在しない」
「馬鹿な……!自分を犠牲にしてまで夢真珠を」
信じられない、と呟き彦座は当惑の言葉を連ねる。
それでも現に今目の前にいるのは百年前真珠になったはずの少女で。
「雛は、ばかなんだ」
ぐいっと涙を拭いながら夢美が呟いた。
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