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「……夢美、だっけか」
「うん」
「夢真珠の、化身だったんだろ」
「そう」
「なら、聞いてくれないか。俺の願いを」
「けど、」
「叶えろってわけじゃねーよ。元夢真珠ってことで、聞いてくれるだけでいい」
唐突な言葉。夢美は戸惑ったが、「壮大。貴方の願いは何ですか」と問う。
此方に背を向けていた壮大が、振り向く。涙で濡れた顔を、情けなく歪めて、哀しそうにぎこちなく、笑って。
「夢見雛と、一生、ずっと。一緒にいたかった」
「……っ!」
ただ、哀しいと思った。
「夢見雛に、もっと触れたかった」
「名前を呼んで欲しかった」
「笑って欲しかった」
「もっと幸せになって欲しかった」
「幸せに、してやりたかった」
「……多すぎだよ」
泣きながら、夢美が言う。
燦も、兵馬も、ぼろぼろと涙を止めどなく、流した。
壮大は夢美の言葉に、「仕方ないだろ」と言って、前に向き直る。
「だって俺は、誰よりも雛が、好きなんだからさ」
それは、これからも。
「木火土金水、火!」
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