きみがだいすきでした。

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さらさらと、風が吹く。 風は木々を揺らし、少年の髪をふわふわと持ち上げている。 頬を撫でる心地好い風に、少年は目を細めた。 少年はちらり、と下を見る。木の上から見た地上は、いつもと何処か違う。 ふ、と微笑して少年は空を見上げた。 (あれからもう、一年経つのか) 壮絶な戦いを終えて、それからは驚くほど穏やかな日々が続いていた。 雛の体によって蘇った夢美は自分を責め、それを兵馬は励まし続け、お互いに好いていることが見てわかるほどに仲睦まじい。 だがそれでも恋仲にはならないのは、雛を失い、いつまでも忘れられずふらふらと過ごす壮大に気を遣ってのことがすぐにわかった。 (気ぃ遣わしてるな) 同じく、妹を失った燦も、いつもどこか上の空で、壮大は苦笑を漏らし心中で呟く。 (雛、お前の存在ってこんなでかかったんだな) なんてことを考えて、またぼんやりと流れる雲を見詰めていた。 (雛、俺はお前が、) だいすきでした。 さく、と地を踏む音が、下から聞こえた。
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