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「雛……!」
ぎゅう、と少女を、雛を抱き締めた。
雛は、壮大の背中に腕を回し抱き締め返す。そしてぽんぽんと優しく叩いて「ただいま」と呟いた。
「遅くなって、ごめんね」
「ばかやろう、と言いたいところだが今日は許す」
「ありがとう、壮大」
微かに震える声は、涙を堪えているからなのだとすぐにわかった。
今まで焦がれた存在が、今、この瞬間腕の中に在る。夢ならば一生覚めなくてもいいとさえ、思えた。
「しっかり掴まってろよ」
「うん!」
ぎゅっ、壮大の首にしがみつくように掴まる。
壮大はそんな雛をしっかりと抱えると、ひょいひょいと軽やかに木を登り、二人分の体重にも耐えられそうな太い枝に優しく降ろしてやる。
「うわあ……気持ちいい」
そよ風に気持ち良さそうに目を細める雛に、壮大も満足そうに笑って隣に腰を下ろす。
「……そういや、雛。何だっていきなり、帰ってきたんだ?」
冷静になってから、浮かんだ疑問を口に出せば、雛は「ああ、それはね」柔らかい表情で話し始めた。
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