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戦いたい…? 違うでしょう?狩菜。 雛は無邪気に笑う妹を見詰めて、悲しそうに目を伏せた。 「ねぇいい?父上」 狩菜は父の顔を覗き込むようにして見上げる。 父親も満面の笑顔を浮かべながら狩菜を見た。 「ふむ。いいだろう。私もお前の成長した姿が見たい」 そう言って、狩菜の頭を優しく撫でる。 「やったぁ!!」 嬉しそうに父親から離れ、姉の方を向く。 「じゃあ狩菜先行ってるねっ!」 言って、狩菜は道場に向かって駆けていった。 「おい、お前の意志無視されてねぇか?」 狩菜の姿が消えた頃、壮大が雛にしか聞こえないくらい小さな声で苛立ち気味に雛に問う。 雛は狩菜の去っていった方向をそれとなしに見やりながら口を開いた。 「仕方ないよ」 ただその一言だけを言った雛に、壮大は何も言えなかった。たった一言がやけに重く感じた。 「私は、夢真珠の器。それしか価値がない。そんな私は、全てを受け入れなくちゃいけない。お父様が、狩菜が言ったことは受け入れなくちゃいけない。意思なんて尊重されない。そういう、運命だから」 背負っているものが、あまりに違うと壮大は思った。
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