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『礼を言う。ありがとう、夢見雛』
「というわけ」
「……何て言うか、規模がでかいよな」
「あはは」
乾いた笑いを漏らす雛。
「……結局彦座って、何だったんだろうな」
「“世界の闇"だって、自然五行は言っていたよ」
「世界の闇、か。違いねぇな」
闇。その言葉は、二人の中にパズルのようにかちりと合わさるような説得力があった。
「……ね、壮大。手、繋いでもいい?」
「今更断るようなことかよ」
きゅ、とその小さな手を握ってやる。嬉しそうな顔を浮かべる雛を見て、壮大もまた、嬉しくなる。
今、雛に触れている。今、雛は確かに、存在している。それだけで、ただただ嬉しく思えた。
「……ねぇ、私ね。壮大に、ずっと言いたかったことがあるんだ」
雛に視線を向けると、雛は今にも泣きそうな顔で笑っていた。
溢れ落ちそうな涙を見て、壮大はわたわたと慌てて目尻をぎこちない手付きで拭う。心配そうな顔をして見詰める壮大に、雛はくすくすと笑みを溢した。
「私は、凄く嬉しかった。壮大が、夢真珠じゃなくて私自身を護ってくれるって言ってくれたことが」
いつだって、私の心配をしてくれたことが。
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