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「壮大は、私の為に、沢山怪我をして、沢山戦って。何も出来ない自分が、いつもすごくいやで」
「雛、」
声が、震える。
「わたしが、夢真珠保持者じゃなかったら。壮大はこんなことにならなかったんじゃないか、とか」
「雛、それはちが、」
「なのに、壮大がそばにいることが、うれしくて、しあわせで」
そんなことを考える自分が、汚くて厚かましくて。
「壮大、わたしは、」
きみがだいすきでした。
「わたし、は」
言えなかった。
だいすきだったんだ、だいすきなんだ。
だけど、だけど、私にはもう夢真珠はなくて、そばにいてもらう理由がなくて。
俯く雛に、壮大は優しく「顔上げろ」とやんわりと頬に手を添えて言う。
恐る恐る上げると、酷く穏やかな表情をした壮大が、頬を滑る涙を拭って。
「俺もあるよ。言いたいこと」
そう言った。
近付いてきた壮大を、拒む理由が雛には存在しなかった。無意識に、目を閉じる。
ゆっくりと、唇が重なる。
「……雛、」
少しだけ離れて、壮大はゆっくりと、口を開く。
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