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道場へ向かおうとして、父親に呼び止められる。 「いいか。間違っても、狩菜を傷つけるなよ。絶対に手を出すな。」 雛は、父親にわからないくらい小さい溜め息をついた。 つまり、やられろということ。 いつものことだ。 愛された狩菜に傷ひとつつけたくないのだ。だから生傷の絶えない雛にさえ、狩菜を傷つけるなと念を押し、狩菜が満足するまで傷つけ、というのだ。 「わかっています。必ずや狩菜をたてましょう」 壮大はその様子を気に食わないといった表情で見ていた。 何でだ。 その一言だけが頭を支配する。何で雛を大切にしないんだろう。過酷な運命を押し付けておいて、意思を奪っておいて、何で彼女を愛さないのだろう。 先刻でさえ殴られた父親だが、亡くなった母親共に、愛してくれたのを壮大は知っている。 「……親父。何で、」 「壮大、やめろ」 「っ、親父は何とも思わねぇのかよ……!いくら血が繋がらないからって、」 「やめろ!!」 「お、やじ」 苦しそうな、顔だった。 「俺だってあの子を見ていると辛い。辛いけど、仕方ないことだって、あるんだよ」 「……」 ぎゅう、と拳を固く握った。
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