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「そんなに夢真珠が、大切なのか」 ぎり、と歯軋りと共に溢れる言葉は侮蔑を含んでいた。 「力が、巨大過ぎるんだ。夢を叶える真珠。悪人の夢が叶ったらどうなる」 「……く、そ」 俯く息子を、父親はぽんと叩く。 「けどな、こう考えたらどうだ。今回あの子はここを出ていく。……出ていける。お前はあの子の守護だ。あの子と一緒にいて、出来ることは色々あると思わないか?」 「!」 ぽふぽふ、と頭を撫でて父親は「な?」と諭すように言った。 壮大は小さく頷いた。 そうだ。 俺はあんな奴等とは違う。アイツを器だなんてくくりで見てない。同じ人間で、女の子だ。優しくて脆い女の子だ。 俺はあの子の守護だ。 誰が何と言おうと雛の守護だ。 俺が護るのは、夢真珠なんかじゃない。夢見雛だ。 壮大は固く決意し、拳を握り、その拳を見詰める。 いつの間にか武骨になった自分の手。まだまだ子供だし、ちっぽけなことなんてわかっている。 (それでも、) この手で雛を護りたいんだ。 雛を、幸せに、したいんだ。 不意に浮かんだそれに、壮大はカッと熱を集めて振り切るように走り出した。
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