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「ん…」
うっすらと目を開けると、少女は目を醒ました。
窓からは光が漏れて部屋を照らしている。
少女は布団から出ると、昨日用意された着物を着た。
いつもよりも華やかで綺麗な着物。
其れを暫し眺めた後、少女は袖に腕を通す。
今日は、少女の15の誕生日。だが、それはこの華やかな着物を着る理由としては直接的ではない。
来たるべき時が来たのだ。
諦めに似たような決意を胸中で抱きながら、少女は窓から空を見上げた。
柔らかな陽光と、僅かな雲。まるでその中を縫うように飛び交う鳥達。
気持ちの良い朝だった。
「雛様。間もなく時間です」
従者が、コップ一杯の水を運びながらドアを開けた。
雛と呼ばれた少女はそれを受け取り飲み干すと、一瞬目を伏せ、従者に目を向ける。
「…わかった」
少女――雛は、窓を閉めると部屋を後にした。
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