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「壮……大?」
虚ろな瞳が、突然叫んだ壮大を捉える。
床を睨むように俯き、何かに耐えるように、震えていた。
「壮大!!」
彼の父親は、息子に歩み寄る。
「うるせぇ!!黙ってろ親父!!」
父に一喝し、壮大は雛の方を向き、歩き出した。
「主、もう止めてください」
床に手をつき、頭を下げた。
「壮、大……」
自分の為に頭を下げている少年の名を呟き、雛はぽろぽろと涙を溢した。
「必ずや、護り抜きます。命に代えても。命を懸けて。雛を、護ります。ですから。お願いですから、もうおやめください」
「……いいでしょう。そこまで、夢真珠の身を案じてくれるのならば安心です」
言って、雛から手を離す。
「あ……」
突然の解放に、雛は何もできないまま床に向かって落ちていく。
「ありがとうございます、主」
……が、壮大がすかさず手を伸ばし、雛を受け止めていた。
「行きましょうか、雛姫」
そのまま雛を抱え、道場を後にする。
雛は、ぼろぼろになった顔で、にっこりと笑いながら、しばらく止まりそうもない涙をただただ流していた。
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