11/11

338人が本棚に入れています
本棚に追加
/157ページ
「壮……大?」 虚ろな瞳が、突然叫んだ壮大を捉える。 床を睨むように俯き、何かに耐えるように、震えていた。 「壮大!!」 彼の父親は、息子に歩み寄る。 「うるせぇ!!黙ってろ親父!!」 父に一喝し、壮大は雛の方を向き、歩き出した。 「主、もう止めてください」 床に手をつき、頭を下げた。 「壮、大……」 自分の為に頭を下げている少年の名を呟き、雛はぽろぽろと涙を溢した。 「必ずや、護り抜きます。命に代えても。命を懸けて。雛を、護ります。ですから。お願いですから、もうおやめください」 「……いいでしょう。そこまで、夢真珠の身を案じてくれるのならば安心です」 言って、雛から手を離す。 「あ……」 突然の解放に、雛は何もできないまま床に向かって落ちていく。 「ありがとうございます、主」 ……が、壮大がすかさず手を伸ばし、雛を受け止めていた。 「行きましょうか、雛姫」 そのまま雛を抱え、道場を後にする。 雛は、ぼろぼろになった顔で、にっこりと笑いながら、しばらく止まりそうもない涙をただただ流していた。
/157ページ

最初のコメントを投稿しよう!

338人が本棚に入れています
本棚に追加