運命の日

3/10

338人が本棚に入れています
本棚に追加
/157ページ
「来たか、雛」 「…はい、お父様」 大広間へと足を踏み入れた雛は、父の前へ歩き出るとひざまずき頭を垂れる。 後ろには、従者たちがずらりと並んでおり、雛は一人一人に目を遣った。 知らない顔などいない。全ての人の顔も名前も頭に入っている。 そんなことを思いながら雛は皆一様に口を結ぶ従者を見ていた。 その時だった。 二人、知らない顔がいる。 一人は、父と然程歳が離れていないであろう男。 もう一人は、雛と同じくらいの歳であろう、少年。 青い髪をしたその少年を、雛はそれとなく見詰める。 そんな時、雛の父はその少年に手を向けながら言った。 「雛。この少年が夢真珠を護る役目を承った」 「…はい。宜しくね、え、と…?」 其れを聞いた雛は、にこりと笑い少年に呼び掛けようとしたが、名前がわからず、つい止まってしまった。 「……だい」 「え?」 ぽつりと少年が言葉をもらした。 聞き取れず、雛は思わず呆けた顔のまま、首を傾げる。 そんな雛に、少年は先刻よりも大きな声を出して言った。 「壮大。俺の…名前」
/157ページ

最初のコメントを投稿しよう!

338人が本棚に入れています
本棚に追加